第30話   黒鯛シーズンに考える   平成16年10月31日  

いよいよ10月も終わりとなり庄内の磯は黒鯛釣のシーズン本番に突入した。今年は特に相次ぐ数回の台風の北上と海水温が例年に比べて以上に高いと云う状況にある。例年に比べ夏に釣れている筈の魚が10月に入ってもまだ釣れているようだ。地球温暖化が叫ばれていく久しいが、南の方でしか釣れぬ魚が北上して来ているのも事実である。台風が対馬海流を押し上げてしまったと云う事も考えられる。日本海は大陸と日本列島に囲まれた湖見たいなものだから、一度暖められて海水は中々下がらないのであろうか? 

また、近年クロダイが釣れる時期も長くなって来ている事も事実である。昔は渡りの黒鯛がいなくなると、居付きのクロダイが12月一杯釣れていた。何時の頃からかそれが115日頃まで釣れる様になり、最近では2月になってもポツポツと釣れている。釣り方の進歩が・・・と考えていたが、最近必ずしもそうとは云えないのではないかと思うようになって来た。

例年10月の中旬以降、季節風が吹き始める頃から大型の黒鯛が越冬の為の荒食いの季節に入る。春の様に釣れても直ぐに上がって来る黒鯛と異なり、これが同じ黒鯛かと思わせる引きが楽しめる。庄内の釣り人はこの引きを楽しむ為に昔から黒鯛釣に夢中になって来た。だから黒鯛は秋に釣るものというイメージが強い。長い間春の黒鯛ははらみ鯛云って、釣れても余り引かず食べても美味しくは無いから、いくら大きくとも釣るのを恥とされてきた。それが結果的に繁殖を妨げなかった事で、庄内の秋の風物詩である黒鯛の幼魚シノコダイの釣を大いに楽しんでも数は容易に減る事がなかった。幼魚のシノコダイは数を釣って家族一同夜を徹して火に焙りそして乾燥させ正月に色々工夫し食べた。何時の頃からかこの循環が春の黒鯛釣が盛んになり、釣り人の増加と相まって黒鯛の個体数を激減させるようになった。

数が減っても釣り人口は増え続け、残念ながら一部放流による黒鯛の増加が無ければ釣れない状況下になりつつある。毎年のように大物を狙う人はシノコダイ釣の人を非難し、シノコダイを釣る人は、はらみ鯛を釣る人を非難する。大物を狙う人はシノコダイが釣れたらリリースする傾向があるものの、春のノッコミの黒鯛釣を行っている人がリリースする人は少なくない様だ。シノコダイ釣の人は釣れたものは昔からの伝統ですべてお持ち帰りとしている。昔は束釣り(そくつり)と云って100匹で1束と云った。上手な釣り人は2束、3束と釣っていたものだ。最近はその束釣りはまったく不可能で、僅か2030匹釣るに丸一日かかる事もめずらしくない。どちらにしてもこのような循環では、数が減らない訳が無い。

現在も色々な釣り形で黒鯛釣りが行われている現実から判断して、両者を立てて考えるしかなく、やはり放流しか打つ手はないのではなかろうか(?)と思えてくる。春のノッコミ時の黒鯛釣の禁止が金もかからず一番望ましいのであるが、このように盛んになってからの禁止は出来そうにも無い。又、両者を立てて今後23年の間獲り過ぎの為に数の減った秋田県のハタハタのように、黒鯛釣の全面禁漁にすると云う事も考えられる。また、禁漁区を設ける事も考えて良いのではなかろうか?どちらにしても将来に向けた建設的な考え方が実行されても良い時期にさしかかっているのは間違いのないところだ。